お問い合わせ 事例集DL

デンカ株式会社(元電気化学工業株式会社) 大船工場 様

デンカ株式会社(元電気化学工業株式会社) 大船工場 様

適正な資材発注を目指してAsprovaを導入、
製造ラインの「見える化」を実現し、スケジューリング時間も半減



[ 詳細はPDF ファイルでご覧頂けます ]
電気化学工業様は1915年(大正4年)、当時アセチレンランプの灯火用が主用途だったカーバイドから、誘導品として肥料である石灰窒素を製造・販売することを目的に設立された。その後、有機合成、石油化学、機能化学品と事業分野を拡げ、現在では有機系素材、無機系素材、電子材料、樹脂加工製品という4つのフィールドに事業を再編して活動を展開している。

2006年6月、同社の大船工場では、生産管理業務の改善プロジェクトを立ち上げ、その一環として効率的な資材発注などを実現するためにAsprovaを導入した。Asprova導入前の課題、導入の経緯、現在の導入効果などについて、大船工場 製造第一部 包材課 包材テープ係長の成澤浩次氏、製造第二部 合繊課 合繊係長の岩瀬貴博氏にお話を伺った。

デンカ株式会社(元電気化学工業株式会社) 大船工場 電気化学工業株式会社 (現デンカ株式会社)
 ■本社所在地: 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号
 ■設立: 1915年5月1日
 ■資本金: 369億9843万6962円(2007年3月31日現在)
 ■授業員数: 連結4696名/単体2635名(2007年3月31日現在)
 ■事業内容: 樹脂原料/合成樹脂などの有機系素材、肥料/無機化学品などの無機系素材、
  電子部材/電子包材などの電子材料、食品包材/建築資材などの機能・加工製品の製造販売等  

■効率的な資材発注を目指して、生産スケジューラの導入を決定

今回Asprovaを導入したのは、大船工場で包装資材を製造しているラインで、冒頭で紹介した樹脂加工製品事業に属する部署だ。独自の粘着塗工技術を駆使してダンボールの梱包用に使われるテープなどを作っており、特殊フィルムを使用することで、カッターを使わなくても手で簡単に切ることができる作業性の高さも実現している。
包材テープの製造ラインでは、まず「ニーダー」と呼ばれる工程で十数種類ある原料を混合して粘着材(=のり)を製造する。次に「コーター」という工程で、前工程で造ったのりを基材に塗工し、一定長さのテープを紙管に巻きつける。そして最後の「仕上げ」工程で、製品種類に応じたテープ幅にカットし、製品化している。また「仕上げ」工程ではスリッター設備での加工による長尺製品にも対応しており、テープ長さにより、仕上げ設備が選定される。
生産管理業務の改善プロジェクトの開始時期は2006年6月で、Asprovaの導入プロジェクトは2007年1月から始まった。機能・加工製品事業にスケジューラを導入することになり、その主対象となったのが包材テープの製造ラインだ。当時の製造現場における課題について、製造第一部 包材課 包材テープ係長の成澤浩次氏は次のように説明する。
「当時一番悩ましかったのは、資材の発注がうまくできていなかったことです。テープに塗工する粘着材は原料を十数種類も混合して作るのですが、原料発注は各工程の担当者任せで、そこからライン全体の管理者、資材部門を経て、各原料メーカーに発注されるという流れになっており、足りなくなったら随ツールとしてスケジューラの導入を決定した」。
デンカ株式会社(元電気化学工業株式会社) 大船工場
■品選定にあたっては、千葉工場で稼働実績のあったAsprovaに白羽の矢

実際の製品選定にあたっては展示会を見て回るぐらいで、Asprovaと競合製品との詳細な比較検討はほとんど行なわなかったという。それというのも、同社の千葉工場が先行してAsprovaの導入プロジェクトに入っており、その有用性がほぼ見えていたからだった。
「千葉工場でAsprovaの導入対象だったのは、塩化ビニルを素材とした電気絶縁テープの製造ラインです。我々の包材テープはラインも1つですが、電気絶縁テープはライン数も、品数も多く、そこでうまく回りそうならうちでも使えると考えたのです」(成澤氏)。

千葉工場は大船工場と同じ事業部であり、2006年9月からAsprovaの導入プロジェクトを開始していた。そこで成澤氏は2006年末に千葉工場の導入担当者に話を聞き、大船工場でも利用できるという感触をつかんだ上で、翌2007年1月、経営層にスケジューラの導入を提言、導入が決定した。千葉工場では2007年4月から、大船工場では2007年12月からAsprovaが稼働を開始している。
■受注からの業務フローも改善し、在庫切れなどのリスク低減を図る

「スケジューラの導入前には、営業部門や製造現場などから約20人が集まってミーティングを行ない、今どんな課題があり、それをどう解決していくのか、という討論を重ねていました」(成澤氏)。
例えばその中での議題として、製品在庫の欠品という課題があった。当時、営業からの注文を受けて製造していたのは顧客名を印刷するような特注品だけで、それ以外については工場側で在庫を見ながら補充していた。ミーティングでは、製販間の連絡不備に加え、こうした業務のやり方自体に問題があるのではないかという点に議論が及んだのだ。
「Asprovaを導入すれば、製造工程のスケジューリングは自動化できるかもしれないが、業務自体のやり方がまずければ、結局効果は上がらないだろうという話になりました。そこで今までの業務フローも改善したのです」(成澤氏)。

現在では製造数量は全て営業部門から指示を出す形になり、工場側の判断で見込み生産を行なうことがなくなった。つまり顧客からの受注を起点にして製造ラインを組むことで、在庫切れあるいは余剰在庫を抱えるリスクが大きく低減されたのである。
また営業担当者も、工場の状況をより詳しく把握するようになった。生産管理システムのサーバにアクセスできる仕組みを実現したことで、在庫状況だけでなく、製造計画がどこまで進捗しているかという情報まで、自発的に見に行くようになったのだ。
「見える化と共に、業務に対するスタンスの変化もプロジェクトの大きな成果の1つだと思います」(成澤氏)。
■先手の資材発注を実現、将来的にはスケジューリング時間も半分以下に

Asprova導入の製造ライン側の効果としては、まず先手を打って資材の発注ができるようになったことが挙げられる。「Asprovaから、いつまでに何が、どれだけ必要、という情報が提案されてくるので、これを事前にライン管理者がチェックし、余裕を持って必要資材の発注をかけることができるようになりました」(成澤氏)。
また大船工場でAsprovaが稼働を開始したのは2007年12月からだが、実際にスケジューリングを行なったのはまだ1回で(2008年1月末時点)、それにかかった時間はこれまでとほぼ同じ、約5時間だった。しかし今後について成澤氏は次のように展望する。

「初回のスケジューリングの際には、多少溜まっていたマスターの登録作業があったり、まだAsprovaに慣れていない部分があったりしたので、多少手間がかかりました。しかし慣れてくれば、これが半分以下の2時間程度で完了できると考えています」。
さらにAsprovaの活用によって、新入社員でもある程度の計画立案は可能になるという。「Asprovaに登録したマスターによって、基本計画を立てることは可能です。そこから先はやはり経験やセンスの差が出てきますが、逆に言えば、経験の少ない人間は一定のレベルまではAsprovaから学んでいくことができると思います」(成澤氏)。

原料在庫については、現在はまだ安全のために多少余裕を持たせているが、「今後は事前に発注し、さらに毎日使う分だけを原料メーカーから納入してもらうことができると思います。在庫を保管する場所の削減に加えて、倉庫から出し入れする作業に関わる人手も不要になるでしょう」(成澤氏)。
今後は、同じ大船工場で機能・加工製品事業に属する合成繊維の製造ラインでもAsprovaの稼働が予定されているが、製造第二部 合繊課 合繊係長の岩瀬貴博氏は、「扱っているものが部署によって全く異なるので、いきなり他の全ての製造ラインに展開するわけにはいきません。あくまで慎重にツールを検討していく必要があると思いますが、Asprovaは実績を上げた有力な選択肢の一つであることに間違いはありません」と語る。
同社におけるAsprovaの活用は着実に効果を挙げながら、今後もその利用場面の広がりに期待できそうである。
■お客様の声

これまでベテラン担当者の経験や勘に頼った資材発注を行なっていたのですが、担当者が新入社員に替わったことで、場当たり的な発注業務が顕著になってきていました。そこで製造工程の「見える化」を実現し、誰でも均一なスケジューリングや資材発注を実現するために、Asprovaの導入を検討しました。

大船工場様の包材テープは、製造ラインとしては1つなのですが、工程ごとに順番を決められたさらに細かい工程がありました。早く納品された原料から順番に投入すればいいという単純なものではなく、各工程の特色に合せた作業の割付をしていく必要があったのです。Asprovaは製品自体に柔軟性があり、パラメータをチューニングしていくことで、かゆいところまで手が届くようなスケジューリングが実現できたと思います。
デンカ株式会社(元電気化学工業株式会社) 大船工場 大船工場
 製造第二部 合織課
 合織係長 岩瀬 貴博氏(左)

 製造第一部 包材課
 包材テープ係長 成澤 浩次氏(右)