ERPとSCM

生産から販売・会計・人事の企業活動全領域のビジネスプロセスを支援するアプリケーションパッケージがERP。また、生産・販売・物流・調達の中で顧客満足度を上げ、キャッシュフローを上げる仕掛けがSCM。


 コンピュータアプリケーションのビジネスへの応用は、在庫管理、会計、給与計算、販売管理、購買管理などの業務別に開発されてきた。生産管理の面ではMRP(資材所要量計画)が欧米で普及し、日本でもシステマチックな生産・資材計画として、先進的な企業で導入された。MRPは、経営資源計画(マネジメントリソースプラニング)と拡張され、生産管理分野ではAPICS(アメリカ生産・在庫・管理学会)が世界的啓蒙活動の拠点となって普及を進めた。
 ERP(エンタープライズリソースプランニング:基幹業務総合情報システム)はMRPのM(マネジメント)がE(エンタプライズ)として拡大され、生産だけでなく販売・会計・人事の企業活動の全領域のビジネスプロセスを支援するアプリケーションパッケージである。クライアント/サーバーのネットワーク環境で、多くの業種が扱える標準パッケージとして普及している。メインフレームのレガシーシステムと比較した革新性は、業界を越えて利用できるインフラとしての一般性であって、企業収益につながる意志決定には直接は結びつかない。また、取引データ処理システムとしては、一般性とデータの統合性を除いては従来のアプリケーションシステムと何も変わらない。
 一方、SCM(サプライチェーンマネジメント)は、生産・販売・物流・調達のサプライチェーンの中で、「いつ」「何を」「どこで」「どれだけ作るか」「買うか」「配送するか」という制約ベースで、オペレーションの同期化を狙う意志決定システムである。そこにはスループットや在庫などキャッシュフローを上げるための計画を支援するコンピュータソフトが中核にある。
 SCMソフトは、ERPまたはレガシーシステムからのデータを受けて、意志決定した後の計画データを実行システムとして取引データシステムに返すことで、キャッシュフローを上げるサプライチェーンが可能となる。
 ERPの役割は、プランニングのベースとなるデータベースの一元化であり、SCMの制御系に対して、計測系に喩えることができる。