DBR(ドラムバッファロープ)理論

サプライチェーンの流れを理解するための喩えの例。ロープでバッファを調整し、ドラムでスピードをコントロールすることで、スループットの増大を図る。


 登山隊員がロープをつないで山登りするように、兵士の行進やボーイスカウトがハイキングで行進するときのマネジメントツールに、ドラムとロープがアナロジーとして使われる。
 このトループ(軍隊)アナロジーを製造ラインへ最初に導入したのは、フォード自動車の組立ラインにおいてコンベアベルトで生産工程を連結したことである。つぎに、トヨタの大野耐一氏によって、「カンバン」というロープが導入された。どちらの方式も経営革新になり、経済成長に大きなインパクトを与えた考え方である。
 ボーイスカウトのハイキングの例で分析したように、ボトルネックとなる人を先頭もってきて、その人の速度に後続する人の速度を従属させる(同期化)ためにロープを使う。これによって行進の広がり(仕掛在庫)を防止する。つまり、仕掛在庫をなくすことが経費の削減になる。また全体の行進速度を決定しているボトルネックの前が詰まって行進が遅くならないようように、ボトルネックの前の行進速度の変動を吸収するバッファとしてのロープの役割は大きい。ドラムは、ボトルネックとなる最も遅い人の速度情報を全員に伝達することと、ボトルネックの人を鼓舞し、その速度を上げる役割がある。
 ロープが一杯に伸びると、それにつながった人はそれ以上の速度で進めないように制約を与える必要がある。バッファが一杯になると、作業を中断しなければならないことがあるのと同じように、立ち止まる必要性もあろう。もし、ドラムが先頭の人の速度に合わせて打ち鳴らされると、後続の人との間隔がどんどん広がるように、在庫が増えていずれスループットは落ちる。もしドラムが最後の人の速度によって打ち鳴らされる、すなわち、需要の速度によって行進するのであれば在庫は減り、需要の速度を上げるとスループットは増えていく。プル型のシステムとは、ドラムが最後の人の速度に合わせて打ち鳴らされることであり、需要駆動型のプル方式サプライチェーンマネジメントを意味する。