従属事象と統計的変動

サプライチェーンにおいては、独立して計画を決定できない従続的事象と、オペレーションで生じる変動を統計的に分析する統計的変動に対処するためには、各オペレーションを自律的に同調させる仕組みを作る必要がある。


 サプライチェーンのオペレーション間に能力差があると中間在庫が発生したり、材料不足によるアイドリング状態が発生したりする。ところが、能力がバランスしていても、あくまで平均値としてのバランスであって、それが変動するとその変動がチェーンとしてつながった後続のオペレーションに累積していく。この変動が統計的にランダムであると、オペレーション間に材料不足や能力不足のところが生まれ、リードタイムが長くなる。
 サプライチェーンの従属的事象と統計的変動の特徴を理解するためのメタファ(比喩)に、交通渋滞が挙げられる。追い越し禁止の高速道路で、一定の車間距離を持続したまま流れる車に対して、ある車が加速・減速のランダム運転をすれば、たちまち後続の車の流れを乱し渋滞を発生させる。それは、一台の車の乱雑な運転は後続車輌のコントロールを乱し、その乱れが累積していくからである。もし、車線数が複数あって追い越しができるなら、それはもはや従属事象とはいえない。
 このような不安定な変動、またはサプライチェーンオペレーションの能力のゆらぎを回避する方法としては、車間距離を大きくとって(在庫バッファを十分にとって)おくか、従属関係を逃れるために別の車線、すなわちサプライチェーンのオペレーションでいえば、代替リソースを用意してゆらぎを避けるのである。
 サプライチェーンマネジメントの実行レベルで、このような従属的事象と統計的変動に対処する一番優れた方法は、各オペレーションが自律的に同調できる仕組みを作ることであろう。前が空けばスピードを速くし(在庫がなくなれば生産能力を上げる)、前が狭まればスピードを遅くし(在庫が貯まれば生産能力を下げる)、全体を同調させる。実は、このような従属的事象と統計的変動に対処するために開発されたのが、カンバン方式といえる。
 TOC(制約理論)のベースとなっているサプライチェーンのダイナミックスは、この前後関係のある従属的事象の関係と、オペレーション速度の統計的変動という二つの要因をベースにしている。制約となるボトルネックは、実は従属的関係にあるオペレーションの中で発生する。