シンクロナイゼーション(同期化)

サプライチェーンの不具合となる欠品と過剰在庫という問題を解決するために、シンクロナイゼーションという方法がとられる。ボトルネックを起点にするシンクロゼーションが、サプライチェーンのキーとなる。


 生産(サプライ)と販売(デマンド)を同期化させることで、在庫の過剰と不足をなくすことができる。在庫不足は販売する前であればキャッシュフローにとっての機会損失であるし、生産工程であれば設備のアイドリング(非稼働)となって効率を落とす。一方、在庫の過剰はコストだけでなくリードタイムを長くし、サプライチェーンの流れのスピードを落とすことになる。つまり、在庫水準というパラメータでサプライチェーンを評価すると、多くても少なくてもスループットというキャッシュフローのスピードを落とすことになる。
 生産と販売の関係だけがシンクロナイゼーション(同期化)の対象ではなく、生産を担当する工場の工程間も対象になる。非シンクロナイゼーションになっているサプライチェーンにおいては、過剰在庫と欠品という二つがスループットを落とす要因となる。そのため通常、神経質になるのは欠品によって生じる営業や顧客側のクレームを予防するための過剰在庫である。
 サプライチェーンマネジメントの不具合な状態は、欠品も過剰在庫も同時に起こしてしまうことであろう。この二つの問題を同時に解決する方法がシンロナイゼーションであり、もっと具体的にいえばボトルネックに合わせたシンクロナイゼーションである。シンクロナイゼーションさせることのダイナミックス上の意味合いは、時間軸上でデマンドの曲線と、サプライの曲線を可能な限り一致させることである。
 手作業とロボット作業の二つの工程があるとすれば、人間とロボットの行進のとき歩調を合わせるのがむつかしいように、材料不足や過剰在庫という形でシンクロナイゼーションの問題が生じる。手作業と手作業のオペレーションは、二人の人間の行進のように柔軟に歩調を合わせることができるが、人間とロボットというように能力の差やバラツキが生じる作業の組合せは、同期化が困難となる。
 ロボットとロボットをつないでCIM(コンピータ統合生産システム)の方向に連結すれば生産のオペレーションとしては同期化するが、販売のオペレーションとの同期化の問題が残る。
 シンクロナイゼーションは、サプライチェーン上のすべての経営資源がその能力を発揮するスピードに歩調を合わせることである。また、生命体の心臓や肺臓などの器官の働きも、呼吸や脈拍などを通じてシンクロナイズした状態といえる。